採用情報:公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

シーズン移行。世界と戦うJリーグへ

プロジェクト01
シーズン移行。世界と戦うJリーグへ

樋口順也

執行役員(フットボール担当)

大学卒業後、広告制作会社勤務を経て、2014年1月に公益社団法人日本プロサッカーリーグに入社。その後、事業・マーケティング本部事業戦略部部長、放映事業部部長などを歴任。現在はフットボール担当の執行役員としてシーズン移行に関するプロジェクトなどを推進。

15年前から議論が始まり、世界と戦うためにシーズン移行を決断

――シーズン移行検討のプロジェクトが発足した背景とその後の経緯について教えてください。

日本サッカーにとって「シーズン移行」の議論は、2008年頃から始まり、断続的に検討が続けられてきた大きなアジェンダでした。そもそもシーズン移行とは、開幕時期を現在の2月から8月頃へと変えることを意味します。猛暑での試合数を減らして、より魅力的な試合を展開することや、欧州と同じシーズンにすることでの様々なメリットがあると考えられています。一方、過去の議論では、冬の試合が大幅に増えるプランが前提であり、降雪地域への影響等から何度も否決されたり、先送りになったり、ということを繰り返していました。直近では2017年にも1年ほど議論を重ねた結果、「シーズン移行しない」という決断に至っています。

そこから6年ほど経過し、Jリーグを取り巻く環境もかなり変わってきました。サッカーというスポーツは、世界と密接に繋がっています。そのなかで、アジアサッカー連盟(AFC)が主催するAFCチャンピオンズリーグ(ACL)がシーズン移行を決断。Jリーグとシーズンがずれるという状況が生まれました。また、これまで毎年小規模で行われてきたFIFAクラブワールドカップが拡大され、32クラブが参加する大会へと拡大。2025年から4年に1度行われることになっています。

今までのJリーグは「世界と戦う」という目標を立てづらい部分がありました。日本代表ではワールドカップでベスト8、さらには優勝という目標を掲げているわけですが、Jリーグは世界とどう戦うのかという点で、はっきりとした目標が立てづらかったわけです。ACLやFIFAクラブワールドカップが大きく様変わりするなか、改めて世界と戦うという部分にフォーカスしなければいけない。そういった思いから、もう1度「シーズン移行した方がいいのかどうか」を議論することになったのです。

感情論ではなくファクトを提示することで、より良い答えを導いていく

――プロジェクトを進めるうえでの課題は何でしたか。また、それをどう乗り越えたのでしょうか。

「シーズン移行」というワードに対して、その人やそのクラブによって、抱く印象が大きく変わります。降雪地域であれば「雪の中でサッカーはできない」であるとか、冬に中断をすると「平日開催が増える」であるとか、逆に「現状のシーズンでは夏の試合が多くて、良いプレーができない」という声もありました。

こうした「印象」に対して、できる限り「ファクト」をお示しできないかと考えました。シーズンを移行すると冬の試合は何試合増えるのか、平日開催は何試合増えるのか、それに対するビジネス的なインパクトはどれくらいあるのか、夏の試合が多いことによるプレーへの影響は何がどの程度あるのか等、データやシミュレーション結果を出していく。結局のところ、「すべての面でこちらのシーズンの方がいい」ということはないわけです。それぞれの立場で「こちらのシーズンはここが悪い」と言い合っていても、全体像が無い中でお互いの欠点の部分のみに注目をしてしまうことになります。「現在のシーズン」と「シーズン移行した場合のシーズン」、それぞれ全体として見たときに、日本サッカーにとってどちらがいいのかを建設的に議論できるように、できる限りファクトを並べるように心がけました。

私は2017年のシーズン移行の議論の場にも参加しておりましたが、その時の話し合いを聞いていて、正直、議論がうまくかみ合っていないと感じる部分がありました。印象論での意見が先行して、どうしても感覚的な議論に終始しがちだったと記憶しています。そこで今回のシーズン移行検討のプロジェクトを進める上では、できる限りファクトを積み重ねることで、「印象のみでの賛否」が先行してしまって議論が分断することが無いように進めていきたいと考えていました。様々な方々にご協力いただき、走行距離やインテンシティの値などをきっちりと提示できたことは、非常に大きなインパクトがあったという印象を持っています。

――シーズン移行をする2026-27開幕に向けて残された課題や今後の取り組みは?

今後の課題の一つは、シーズン移行期にファン・サポーターの皆様に楽しんでいただける特別大会を行い、パートナーやメディアを含む全てのステークホルダーの皆様に、変わらず、そして一層のご支援をいたただけるような価値を提供することです。

移行期の約半年間は、通常のシーズンとは異なる、非常に特殊な環境になります。例えば、半年間で昇格・降格のある戦いをするのか。そこに対する是非もあります。逆に、昇格・降格がなければ、お客様の楽しみが減るのではないかという懸念もあります。一つ一つの意思決定に非常に大きな影響があるため、少しでも選手やお客様が幸せになれる方策を考える必要があります。

細かい論点も含めると数十案の大会方式を作り、何度も検討を重ねていく。ステークホルダーの皆様に進捗をご説明した際の反応なども踏まえ、今もまさに磨いている状態です。2025シーズンの開幕前には発表したいと思っていますが、取りうる選択肢を徹底的に考え抜いたうえで、ベストなものに磨き上げることができると思っています。

ある意味、年間を通じたシーズンが完璧なコンテンツだとすると、半期の大会はどうしても難しさがあります。それをどう盛り上げるのか。失うものもあるかもしれないけれど、逆に言えば、このタイミングでしかできないものもたくさんあるはずです。これを機会にいろんなアイデアを形にできればとも思っています。

何かに熱狂する感動を、選手たちと一緒に作っていけるのが醍醐味

――このプロジェクトを通じて感じた、Jリーグで働く魅力について教えてください。

毎週全試合スタジアムが満員になるようなJリーグを見たいですし、日本代表がFIFAワールドカップで優勝する姿ももちろん見たいですね。元々サッカーは好きでしたが、これだけ多くのファン・サポーターが毎週全国に集まり、熱狂するというコンテンツはなかなかないわけで、そういうものに携われること自体がものすごく魅力的なことだと思います。

プレーヤーという面では全く実績のない自分が、かつて1人のサッカーファンとして見ていた方々と日本サッカー発展のための議論をしている。これは、いまだに不思議な感覚があります。自分がシュートを打って、ゴールネットを揺らせるわけではないですが、そのファン・サポーターの熱狂の一部に自分が貢献できているとすれば、これは普通では味わえない感覚であり、この仕事の何よりの醍醐味だと思います。

――今後やってみたいこと、実現してみたいことは?

スタジアムにはまだ空席があります。日本サッカーはこれからも発展していきますし、強くなっていく中で、やっぱりもっと多くの方々にスタジアムに来ていただきたい。人々が熱狂する光景を見ることで、間違いなく普段の生活では味わえない感動が味わえるはずですから。これは、人生を生きていくうえでかけがえのないものだと思います。

これからも日本サッカーの発展に貢献し、そしてお客様にも楽しんでいただく。日本代表がFIFAワールドカップで優勝し、全国のスタジアムが毎週満員のJリーグになる。これらが実現する日を夢見て、日々、頑張っていきたいと思います。